第五章『心に響く邪悪なる声~帰還の終曲~』あらすじ
エントレア大監獄、中央棟でも戦闘は続いていた。
ジギタリスとカモミールがカトレアと名乗る者と戦っている。
彼女もまた何者かの魂を宿しているはずだが、ジギタリスの黒き武器では
体ごと魂まで燃やし尽くしてしまうと決着をためらっていた。
ジギタリスは相手をしゃべり方の特徴から氷の大悪魔だと言った。
だが、本人はカトレアと名乗り、話がかみ合わない。
真意が伝わらないことに業を煮やしたカトレアは、この二人では話にならないと
右手に備えた氷の意匠、鯨頭(くじらがしら)で二人を押しつぶしにかかる。
だが、二人も負けてはいない。カモミールの力は鯨頭を溶かし難を逃れる。
カトレアと名乗るものは最後の手段に出た。
海月頭の毒針で、二人にある女性の記憶を呼び戻したのだ。
「水には、物事を記憶する力がある。埋もれた記憶だってほじくれんのサ。」
「この人は……カトレア、先輩!」
かつて共に戦い、水に還った姉であり、先輩である大切な仲間。
何故忘れていたのか不思議に思う二人。だが、はっきりとわかることはあった。
目の前に立ちはだかる、自らをカトレアと名乗るものは、確実にカトレアではない。
「本物のカトレアねえちゃんの魂を捕まえてる氷の大悪魔だ!」
「ふふふ、蘇りの兆しを感じる。これこそ『名前』が持つ力……。」
二人が名前を思い出したことで、氷の大悪魔も何か大切なことを掴んだようだった。
ここにもう用は無いことを自覚した、カトレアを名乗るものは、
ジギタリスとカモミールに最後に最強の攻撃を放つ。
二人は今までの鍛錬と機転でこの危機を切り抜けられるのか。
第四章『心に響く邪悪なる声~秘密の接続曲~』あらすじ
謎の襲撃者に対応するため、エントレア大監獄の南棟に来たカルミアとルベリス。と、ゴーちゃん。
だが、カルミアは上の空。ゴーちゃんは耳障りな音がする、消しに行こう、とそれぞれ別々の行動になってしまう。
再び合流したのは、怪しきスフレの姿をした何者かの前でだった。
「あの子は……スーちゃんの魂を捕えてる。」と、感じとるカルミア。
スーちゃんを取り戻す、と行動に移った二人は急にめまいに襲われる。
怪しきスフレは言う。「私の魔法はすでに貴方たちを捉えてる。」
ゴーちゃんの耳鳴り、震える窓ガラスの振動からこのめまいの原因は聞こえない音の魔法だと気づくカルミア。
ルベリスの機転で、その風の魔法を打ち破ることに成功した。
その勢いで、カルミアは本当のスフレを取り戻すべく怪しきスフレにマインド・ダイブを仕掛け心に潜っていく。
その先で見たものは、魔界での大悪魔同士が集い何かを企む光景であった。
より深く潜れば詳細がわかる、しかしスフレもより苦しむことになる……。
その選択に躊躇は無かった。スフレを、助けなければ!
だがスフレの心から出られない。最初から怪しきスフレは心得ていた。
「確実に息の根を止めるために、貴方を泳がせてたの」
カルミアが黒き杖を振るえば外に出ることはできる、ただし、スフレも無事では済まないだろう。逡巡するカルミア。
光に包まれた中で身動きしないスフレと、苦しみだすカルミア。
様子がおかしいことに気付いたルベリスが間に割って入る。
「悪魔先輩に任せた方が、スフレ先輩が助かる確率は高いかも……。
でも、何か気になる……。何とか……しなきゃって思う!」
スフレは本当に戻るのか? 大悪魔たちが集まっての企みとは一体?
第三章『心に響く邪悪なる声~激動の交響曲~』あらすじ
エントレア大監獄が謎の襲撃者に襲われる少し前。
カレンは学園で魔動機を相手に新たな魔法の練習をしていた。
ラナン先輩とジギタリス先輩の力、炎とマグマの力を同時に使えれば
もっと戦えるのではと。
それを見ていたダチュラに助言を受ける。
魔力の配分を考えろ、という言葉に、カレンは答えを見つける。
次いでカレンは、ダチュラに「形のないものを切る術」を教えてくれと頼む。
ダチュラの、何としても一線を越えるという覚悟がある?との問いに、あります、と即答したカレン。
悪魔先輩ダチュラの教えを学び、実践していた。
それから日は過ぎて。
まさに今、襲撃されたエントレア大監獄・西棟の対応にあたるダチュラとカレン。
二人の前に姿を現したのは、還ったはずのプルメリアだった。
「人生は苦痛に満ちています。だからわたくしが終わらせて差し上げます。」
慈悲を与えるとして、建物を破壊し看守や囚人を次々消すプルメリアを見て、そんな楽しそうな貴方を見るのは初めて、と喜ぶダチュラ。
彼女は、心の底からそう望んでいる、と。
プルメリアに刃を向けることに悩むカレンだったが、ダチュラの窘める言葉に改めてプルメリアとの戦いを決意した。
戦いの中で、悪魔がプルメリアの魂ともいうべきものを捕え操っていると知り落胆するダチュラ。
プルメリアの鏡と分身を使った攻撃に傷ついてしまうが、それは、カレンの覚悟を呼び、さらなる目覚めのきっかけを作るものであった。
追い詰められたカレンはプルメリアの攻撃を捕え、真のプルメリアを解放する。
(……キキッ、これだけやればいいじゃろう。ここは退散じゃ。) その陰でほくそ笑む、大きな影があった。
第二章『心に響く邪悪なる声~激動の交響曲~』あらすじ
魔法犯罪者を収容した、最も大きく最も堅牢なエントレア大監獄。
そこがまさに今、何者かに襲撃されていた。
北塔の対応にあたるルチカとチコの上を通り過ぎた赤い鳥は
風を怯えさせ、監房を、逃げ遅れた看守を囚人を、全てを業炎に包む。
「ルチカ、チコ久しぶり! 待ってて、邪魔者を消し炭にしちゃうからね!」
赤い鳥を追ったルチカとチコの前に現れて、明るくそう言ったのは
ラナンその人であった。
だがその行いから、いくら姿形が同じでもラナンではないと確信する二人。
チコの新しい武器「錨砲」を以ってラナンと対抗するが、炎の翼は強大すぎた。
勝てないかも……と望みを無くすチコに、ルチカは優しく言った。
「学園でのことを思い出して。信じて二人で戦えば、必ず勝てるはず!」
チコは練習を思い出し、「錨砲」の精密射撃と
ルチカの切り札「黒き鎌」でラナンを追い詰めていく。
後は無いと告げるルチカにラナンは、私をそのまま傷つけていいのかと問う。
ルチカは風の声を聴き耳を疑った。
「この人の中に、閉じ込められてます。本物のラナンさんの魂が……!」
探し物はここではないと、中に眠る本当のラナンを人質にして
追撃を回避し飛び去ろうとする、ラナンではない何か。
ルチカは逃がすまいと、黒き鎌に力を集中する。
チコは錨砲の鎖でラナンを捕えるが、ラナンはいとも易くその鎖を断つ──
かに思えたが、簡単に絶てるものではなかった。
「うっそー! この子も黒い魔力を!?」
チコも奥に眠る黒い魔力を呼び起こし、錨を強化していたのである。
脱出に手間取ったラナンに、渾身のルチカの黒い竜巻が襲い掛かる。
「……ラナンさん、おかえりなさい!」
第一章『心に響く邪悪なる声~復活の序曲~』あらすじ
5人の乙女たちがエレメントに還ってから少しの時間が経った頃。
悪魔も学園乙女も、乙女がいなくなった後の役目をそれぞれこなしていた。
かつて乙女と呼ばれた守護精霊の魔力は、終わらない平和を願い ジルバラードを漂う。だがそこにも魔の手は迫っていた。
ある日突然、ヘカトニスの常闇の監獄が襲われる。
魔法犯罪者を捕えていた監獄を破壊しつくしたその者は、
逃げ惑う看守たちに、自らをこう紹介した。
「そう、私はロザリー。かつて乙女と呼ばれた者。」
何かを探すように破壊を続けるロザリー。
対応したリリーとアンゼリカはその姿に驚く。
「ロザリー先輩は闇に帰ったはず。それなのにどうして……。」
だがいくらロザリーの姿でも、ジルバラードの平和を乱すのならば、と
目の前のロザリーと言う者と戦う決意を固めるリリー。
拙者もエンジェルの端くれならば、とそれに続くアンゼリカ。
圧倒的なロザリーの魔力の前に歯が立たないアンゼリカだったが、
リリーは黒い魔力で精錬した武器、黒き槍を使いロザリーに迫る。
この一撃で討ち取れるというところで、リリーは攻撃をやめる。
戸惑うアンゼリカにリリーは声が聞こえると言った。
「あの偽の身体の奥深くには、 本物のロザリーの魂が閉じ込められています。」
リリーとアンゼリカの必死の呼びかけにも反応が無いことから、
ロザリーの自力の脱出が難しいのだと判断したリリーとアンゼリカ。
二人協力のもと、荒療治としたアンゼリカの「光魔忍法、気付けの術」で
ロザリーを張り倒し、無事にロザリーを捕えていたものを
祓うことに成功したのだった。
─ Prologue ─
ジルバラードを征服しようとした魔人ジルバの企みは、
救いの鍵の少年と、創世の魔力と半神と融合した乙女の力によって潰えた。
ジルバは、無の境界に落ちる寸前に唯一なる者との融合から離れたが、
魔法省により捕らえられ、魔法犯罪者収容所に収監された。
そして始祖のエンジェルの力、創世の魔力を使った代償に乙女たちは
エレメントに還り、救いの鍵の少年たちの前から姿を消す。
事件後、乙女先輩が還ってしまったことに悲しむ学園乙女たちだが、
不甲斐ない姿は見せまいと、悪魔先輩たちとエンジェル活動に邁進するのだった。
だが、怪しき者は水面下で蠢いていた。
闇の守護精霊がヘカトニスに住む人々に深く静かな眠りをもたらし、変わらずジルバラードの平和を願う中、
突如魔法犯罪者が囚われているヘカトニス監獄で爆発音が鳴り響く。
「難しいものですね、手加減というものは。」
対応にあたったエンジェルは驚いた。
「貴方は……!?」
「ロザリー先輩殿?」